大腸菌のtRNAには硫黄で修飾されたヌクレオシドが存在する。そのうちの一つである5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnm^5s^2U)-はtRNA^<Lys>、tRNA^<Glu>、tRNA^<Gln>のアンチコドンループのゆらぎ位置に特異的に見出された。修飾されたヌクレオシドの2-thio基は翻訳の際の効率化を促し、リーディングフレーム維持に重要であるということが明らかにされている。mnm^5s^2Uはウリジン(U)→2-チオウリジン(s^2U)→mnm^5s^2Uという経路で生成すると考えられており、Uからs^2Uへの変換にはシステインデスルフラーゼIscSとMnmAが関与することが知られている。今回、MnmAとIscSによるtRNAへの硫黄挿入反応について詳細な検討を加えた。大腸菌MC4100のゲノムを鋳型としたPCRによりMnmAの遺伝子断片を得た。この断片をpQE30ベクターのBamHI-PstI部位へ挿入することによりクローニングおよび大量発現系の構築を行った。N末端にヒスチジンタグが付加した形で生産された本酵素をニッケルキレートカラムクロマトグラフィーにより電気泳動的に均一に精製した。精製MnmAの分子質量はSDS-PAGEにより約47kDaであった。ゲル濾過クロマトグラフィーにより解析したところ、本酵素は主にモノマーとして存在するが、一部はダイマーを形成していることが示唆された。MnmAはIscS、[^<35>S]-L-システイン、ATPの存在下、tRNA^<Lys>への^<35>S挿入反応を触媒した。また、ATPの代わりにGTPを用いた場合も硫黄によるtRNAの修飾反応が確認された。MnmAはATP加水分解反応を持ち、AMPを生成すること、またこの反応はIscS、L-システイン、tRNA^<Lys>の存在により促進されることが明らかとなった。これらの結果から、MnmAはATPを用いてウリジンの2-カルボニル酸素を活性化することが示唆された。
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