tRNAの修飾塩基である5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnm^5s^2U)はtRNAのアンチコドンのゆらぎ塩基に特異的に存在し、アミノアシル化およびリボソーム上での翻訳の効率化にとって重要な働きを担っている。本研究では、大腸菌において、mnm^5s^2Uとその誘導体である5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnm^5se^2U)の生合成に関与することが知られているシステインデスルフラーゼ(IscS)とセレノリン酸シンテターゼ(SelD)、tRNA硫黄転移酵素(MnmA)の機能解析を目的とした。本年度は、まず、MnmAの触媒する反応に関与するアミノ酸残基を特定することを目的として、MnmAの部位特異的変異体5種類(D17A、C49S、C62S、C102S、C199S)を調製した。これらの酵素を電気泳動的に均一状態に精製し、tRNAとの相互作用、MnmAによる基質tRNAの修飾機構を解析した。解析の結果、MnmAのAsp17、Cys102、Cys199は、活性に必須であることが明らかとなった。しかし、これら活性に必須な残基は、MnmAとtRNAの相互作用には影響を与えないことが明らかになった。Cys102とCys199は多くの生物種のMnmA相同タンパク質問で高く保存されている残基である。[^<35>S]システインとIscSを用いたtRNA修飾実験により、IscSの触媒作用によって遊離したシステイン由来の硫黄は、MnmAのシステイン残基上に転移されることも明らかとなった。IscSとMnmAは弱い力でタンパク質-タンパク質問相互作用をすることが示されたことから、IscSからMnmAへの転移には両者の相互作用が関与する可能性が強く示唆された。また、MnmA、SelDの結晶化条件を検討し、両酵素について微結晶を作製する条件を見出したので、現在最適化を行っている。
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