tRNAの修飾塩基である5-メチルアミノメチル-2-チオウリジン(mnm^5s^2U)は、tRNAのアンチコドンのゆらぎ塩基に特異的に存在し、アミノアシル化およびリボソーム上での翻訳の効率化にとって重要な役割を担っている。本研究ではmnm^5s^2Uとその誘導体である5-メチルアミノメチル-2-セレノウリジン(mnm^5se^2U)の生合成に関与するシステインデスルフラーゼとセレノリン酸シンテターゼ、tRNA硫黄転移酵素(MnmA)の機能解析を目的とした。 (1)2-チオ化活性 未修飾tRNA^<Lys>を、IscS、野生型および変異型MnmA、[^<35>S]-L-システイン、MgATP、ジチオスレイトール(DTT)とともにインキュベーションし、ホスフォイメージャーを用いて^<35>Sで標識されたtRNAを検出した。その結果、D17A、C102A、C199Aを用いた反応では^<35>S標識tRNAは生成されず、Asp17、Cys102、Cys199がMnmAの酵素活性にとって重要な残基であることが明らかとなった。 (2)IscSからMnmAへの硫黄転移反応 ^<35>S標識ペルスルフィド型IscSを野生型および変異型MnmAとインキュベーションし、PAGEで分離後、ホスフォイメージャーを用いて^<35>S標識MnmAを検出した。その結果、野生型酵素およびC199Aと比較して、C102Aに転移した硫黄の量は著しく少ないことが明らかとなった。この結果より、Cys102がペルスルフィド型IscSから硫黄を受け取る残基であると考えられた。 (3)AMP生成反応 本酵素反応により生成するATP分解産物を、HPLCを用いて分析した。野生型MnmAをMgATPのみとインキュベーションした場合と比べて、この反応液にtRNA、IscS、L-システインを添加した場合にAMPの生成量が著しく増加した。このことは、本酵素反応において、tRNAがアデニル化される可能性を示唆している。 以上の結果より、以下のような反応機構が考えられた。 ペルスルフィド型IscSの硫黄はMnmAのCys102に転移する。一方で、MnmAはATPを用いてtRNAの34番目のウリジンの2位の酸素をアデニル化により活性化する。Cys102上のペルスルフィドの硫黄、または遊離した硫黄がピリミジン環の2位炭素を求核攻撃してAMPが遊離し、最終的にs^2Uが生成する。
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