高圧が生体組織や細胞や生体高分子に与える影響に関する基礎研究と食品、薬学、医学への応用研究が進展している。その中、ひとつの研究成果として、動植物の組織あるいは微生物(特に酵母)を高い圧力(1000〜4000気圧)にさらすと、細胞内物質が漏出する現象と、逆に細胞内物質が細胞内に浸透するという現象が報告されている。このような高圧力下での物質の"動き"をたやすくする原因を明らかにすることを目的とした。その基礎研究として、生体膜に存在する膜結合型タンパク質の多くは多量体をとっていることから、本年度は、多量体タンパク質に与える高圧力の影響を調べた。モデルとして4量体タンパク質である乳酸脱水素酵素を用いた結果、圧力下では可逆的な解離・会合が起こることがわかった。一方、加熱すると、タンパク質は解離した後、不可逆的に凝集体を形成することから、熱と圧力では変性が異なることがわかった。さらに、補酵素が結合した場合は、熱や圧力による解離を抑制することも明らかにした。
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