1.9-cis-レチノイン酸(9-cis-RA)やそのアゴニストの抗体産生増強効果 レチノイドX受容体(RXR)とレチノイン酸受容体(RAR)の両方のリガンドである9-cis-RAはハイブリドーマの親細胞に依存して抗体産生を約4倍程度増強した。しかし、RXRのアゴニストとして知られるドコサヘキサエン酸やフィタン酸は抗体産生を増強しなかった。したがって、レチノイドによる抗体産生増強はRXRホモ二量体ではなく、RXR-RARヘテロ二量体を介して発現制御されていると考えられた。 2.RXR-α cDNA導入の抗体産生増強効果に対する影響 RXR-αの抗体産生増強への関与を調べるために、抗体産生増強しないハイブリドーマHB4C5にRXR-α cDNAを導入した。しかし、RXR-αはHB4C5中では発現が低く、9-cis-RAによる抗体産生増強は確認できなかった。現在、RXR-α cDNAが導入されたHB4C5を限界希釈法によりクローン化しさらにRXR-αの影響を調べている。 3.蛋白合成阻害剤シクロヘキシミド(CHX)の抗体遺伝子発現増強に対する影響 CHXは9-cis-RAによる抗体遺伝子の発現増強を抑制したが、コントロールであるβ-actinの発現には影響を与えなかった。同様に、CHXはRXR-RARヘテロ二量体を介して発現制御されているRAR-βの発現増強も抑制した。これらの結果は9-cis-RAによる抗体遺伝子の発現増強がRXR-RARヘテロ二量体を介して制御されていることを支持するものであり、また発現増強の際に新規の蛋白質合成が必要であることを示唆している。
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