研究課題
(目的)Cyathane骨格を持つ天然有機化合物長野県に生息するきのこのケロウジ(Sarcodon scabrosus)やかびの一種であるCyathus earliなどに含まれ、抗菌、炎症抑制、神経細胞生長促進活性などの生理活性を示す。特にSarcodon scabrosusからはマウス耳の炎症抑制活性がID_<50>=44nmと非常に低濃度で活性を示す化合物も単離されている。この担子菌は松の木の下にのみ生息するため、培養が困難であり自然からの供給が限られている。従って、効率的な合成経路の確立と絶対構造の決定、新規な生物活性の探索が急がれる。本研究ではSarcodonin類の全合成を行うことを目的とした。(方法と結果)Ethyl 2-oxocyclopentanecarboxylateを出発物質としてホモアリルヨージドと種々の塩基を用いてアルキル化を行った。条件検討の結果、KHを塩基として用いると55%程度の収率で目的化合物を得られた。続いてエステルの還元を行いアルコールとし、ケトンのα位にイソプロピル基を導入した。次に1級水酸基を保護したあとにケトンをビニルトリフラートに変換後、Pd触媒を用いたカルボニレーション反応を行った。種々検討を行ったが収率が悪いため合成経路を根本的に見直した。まず1,4-ブタンジオールから数工程で末端オレフィンと末端に置換オレフィンを有する化合物を合成しring closing metathesisを用いて閉環反応を試みた。その結果Grubbsの第二世代触媒が有効であった。その後先に合成したビニルトリフラートとHeck反応を行いDiels-Alder反応などを用いてSarcodonin Sを合成する予定である。またSarcodonin Aの19位に様々なアシル基を導入して炎症抑制活性を調べた結果アシル基の導入により活性が低下することがわかった。
すべて 2004
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Biosci.Biotechnol.Biochem. 68
ページ: 1362-1365