1)発光タンパク質シンプレクチンをトビイカ発光器より抽出し、あらかじめ発光させて天然存在クロモフォアを消費してアポタンパクを調製した。アポタンパクへ既に化学合成した光親和性アジド化デヒドロセレンテラジンを加えて再構成シンプレクチンとした後、光照射によりニトレンを生成させてシンプレクチンを光標識した。この光標識シンプレクチンをトリプシンで消化しペプチド断片へと分解し、ナノ-LC-Q-TOF型質量分析装置で直接分析した。現在、光標識していないペプチド断片と比較しながら、標識部位について質量分析データの解析をしている。 2)アジド基の置換位置を変えたデヒドロセレンテラジンも平行して合成するために、デヒドロセレンテラジンの新規合成法も開発した。安価な出発原料を用いて、数工程で様々な置換様式のデヒドロセレンテラジン誘導体を合成できる汎用性のある合成ルートを確立した。本合成ルートにより、光標識した後に、光標識ペプチド断片のみを選択的に単離できる置換基をもつデヒドロセレンテラジン誘導体が合成可能となり、質量分析データの解析を容易とすることが可能になった。 3)発光タンパク質(シンプレクチン)溶液に、過酸化水素水を加えると発光が増加することが分かり、これを基にしてシンプレクチンの発光機構における定量的解析が可能になった。過酸化水素濃度を基に種々検討した結果、シンプレクチンのKm値を求めることができた。過酸化水素水は加えすぎるとタンパクを破壊するので、過酸化水素の至適濃度におけるデヒドロセレンテラジンの至適濃度を求め、発光機構の総合的な定量的解析を継続中である。
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