発光タンパク質シンプレクチンをアジド化デヒドロセレンテラジンで光標識しても、標識ペプチドの質量分析による特定は困難であった。これはシンプレクチンの全ペプチド断片を一度に解析していたためと考えられる。そこで、光標識した後、遊離のシステイン残基をすべてアルキル化し、次いでブロモシアンをもちいて大きなフラグメント(数千ダルトン以上)と分解して、電気泳動により蛍光性のフラグメントを特定することとした。アジド基のみならず、ジアゾアセチル基をもつデヒドロセレンテラジンも合成した。これらの光親和性標識化合物について、エクオリンを用いて標識したところ効率よく標識できたことが判明した。 光標識されたペプチドのみを簡便に精製できる官能基をもつデヒドロセレンテラジン誘導体も新規に合成することとした。ストレッカー反応を鍵反応として数段階にて効率よく様々な誘導体を合成できる新規ルートの確立に成功した。つぎに、シンプレクチンの活性部位における、デヒドロセレテラジン類の構造活性相関についての研究を行った。その結果、疎水性の置換基がデヒドロセレンテラジンの6位に導入されると、発光活性が著しく低下することが分かった。 ジアゾアセチル-デヒドロセレンテラジンにより、電気泳動とゲル濾過カラムの操作を省くことが可能となり、標識条件を種々検討できるようになった。標識した後、デヒドロセレンテラジン部分をビオチン基に置き換え、光標識されたペプチド断片のみがアビジンカラムに吸着されるので、溶出させるときにオンラインで蛍光検出ナノ-HPLCに接続し、Q-TOF-MSおよびMS/MS測定し光標識部位を解析する手法が確立できた。
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