研究概要 |
本研究では、シロイヌナズナゲノム上クラスターを形成するテルペン環化酵素とP450遺伝子が植物テルペノイド生合成経路上でも密接に関連していることを実験的に証明することを目的とする。そのため、今年度は(1)各遺伝子の発現様式の解析、(2)各遺伝子のcDNAのクローニング、(3)テルペン環化酵素の解析、を行った。 (1)各遺伝子の発現様式の解析:RT-PCRにより植物体の各器官における各遺伝子の発現様式を解析した結果、クラスターを形成する遺伝子のほとんどが器官特異的に協調して発現していることが明らかになった。特にトリテルペン環化酵素とP450では根で特異的に発現しているものが多く見られた。またテルペン環化酵素(AtTPS11)とCYP706A3のクラスターは共に花で特異的に発現していた。 (2)cDNAのクローニング:P450として10種、テルペン環化酵素として5種、トリテルペン環化酵素として2種の全長cDNAをクローニングした。 (3)テルペン環化酵素の解析:テルペン環化酵素のうち、花で特異的に発現していたAtTPS11について、その組み換え酵素を作製し、酵素活性の測定を行った。AtTPS11はN末にシグナルを持たないことから、セスキテルペンを生成する酵素ではないか、と予想させた。大腸菌でGST融合酵素として発現させアフィニティにより精製した酵素をFPPと反応させたところ、多数のセスキテルペンのピークが検出された。そのうちの3種については構造決定を行い、(-)-thujopsene,β-chamigrene,β-himachaleneと同定した。最近シロイヌナズナの花から揮発性セスキテルペンがいくつか同定されており、今回同定したうちの前2つは花のセスキテルペンと一致した。今後、これらAtTPS11のセスキテルペン生成物が、クラスターを形成するCYP706A3の基質となり水酸化されるかどうかを検討していく。また各遺伝子のプロモーターを単離し、さらに詳細な発現様式をPromoter+GUSを使った組み換え植物により解析する。
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