我々はこれまでlupeolを始めとしたルパン型トリテルペンが、マウスメラノーマB16 2F2細胞分化を誘導することを報告してきた。本年度はlupeolのB16 2F2細胞分化におけるメカニズム解明を目的に、種々のシグナル伝達系阻害剤を用いた結果、protein kinase A (PKA)阻害剤であるH89がlupeolによる同細胞メラニン産生促進活性を抑制した。逆に、cAMPなどの種々のPKA活性化物質は単独でB16 2F2細胞分化を誘導し、lupeolと同時添加により、協調作用を示したことから、lupeolによるB16 2F2細胞分化誘導ではcAMP-PKA系が重要な役割を担うことが推察された。さらに、p38 mitogen-activated protein kinase (p38 MAPK)の阻害剤であるSB203580もまた、lupeolの作用を抑制した。Western blottingによりlupeol添加したB16 2F2細胞ではp38 MAPKの活性化も検出されたため、lupeolによるB16 2F2細胞に対する刺激はc-AMP-PKA系の下流で、p38 MAPKの活性化を通じ、核内に情報が伝達され、チロシナーゼの発現に繋がると考えられる。 さらに、アキノノゲシ(Lactuca indica)からlupeolのC-3位のβ-水酸基に長鎖脂肪酸が付加したlupenyl palmitateを単離し、B16 2F2細胞分化に対する影響を検討した結果、lupeolに比べ活性の低下が認められた。このことから、ルパン型トリテルペンのB16 2F2細胞分化にはC-3位の構造が重要であるという結論にいたった。
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