我々はマウス胎仔より調製した小腸断片を組織培養することにより、IECの初代培養系を確立している。胎仔BALB/cマウスより調製した初代培養IECは、卵白アルブミン(OVA)特異的T細胞レセプターを発現するトランスジェニックマウスから精製した脾臓および小腸上皮内リンパ球由来CD4陽性T細胞に対し、抗原提示機能を有することが明らかとなった。 本研究では、初代培養IECの抗原提示機能に細菌由来物質がどのような影響を及ぼすかを解析することを目的としている。そこで、はじめに初代培養IECにおける液性因子(サイトカインやケモカイン)および細胞表面分子の発現や産生が、細菌由来物質による刺激でどのように変化するか解析した。液性因子については培養上清中に分泌されたタンパク質の濃度を酵素免疫測定法(ELISA法)により測定した。また、液性因子および細胞表面分子の転写レベルでの発現については、定量的リアルタイムRT-PCR法によって解析を行った。初代培養IECを、菌体成分の一つであるリポ多糖(LPS)の存在下で5時間培養した後RNAを抽出し、定量的RT-PCR法により解析した結果、Tollレセプター(TLR)2とTLR3のmRNAの発現が、LPS刺激によって10-50倍上昇した。サイトカインに関しては、LPSで刺激した場合にIL-1b、TNF-aにおいて顕著な発現上昇がみられ、IL-6、IL-12p35、IL-15においても10-50倍の発現上昇がみられた。ケモカインに関しては、MIP-1α、KC、MCP-1、MIP-2の発現上昇がみられた。また、IL-6、MCP-1についてはELISA法による解析においても、LPSによる産生の上昇が認められた。
|