今日ダイオキシン類は内分泌撹乱作用をはじめ様々な毒性を生体に示すことが知られている。そのダイオキシン類の90%は食品とともに経口から入るとされ、生体への吸収をいかに制御するかが重要となる。本研究では昨年度、ダイオキシン類を簡便に定量できるダイオキシン類の遺伝子発現制御機構を利用したバイオアッセイ系を作成しこれを腸管上皮Caco-2細胞の単層培養系に応用することで、腸管におけるダイオキシン類の吸収・透過能を評価できるin vitro検定系を構築した。そこで本年度は構築した本検定系を用いて、ダイオキシンの吸収を抑制する食品因子について検討をすすめた。まずラットを用いた動物実験において既にダイオキシン排泄促進作用が報告されているクロロフィルと不溶性食物繊維がTCDDの細胞層透過性に及ぼす影響について検討をおこなった。Caco-2単層の管腔側にTCDDとクロロフィル及びコーン由来不溶性食物繊維を添加したところ濃度依存的にTCDD透過量は低下しin vivoの実験結果と一致したことから、本実験系の有効性が示唆された。次に二次農産物である茶殻を用いて凍結融解処理を施し、そのダイオキシン吸収に対する影響を調べた。走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて各茶殻表面を解析した結果、緩慢凍結した茶殻の構造は未処理に比べ大きく変化し、急速凍結した茶殻には細かい空洞が多数形成されていた。そこで上記茶殻をそれぞれTCDDと共に添加してアッセイに供したところ、凍結融解処理によりTCDD透過抑制効果が強まり、特に急速凍結処理では著しい抑制効果がみられた。以上の結果より、本研究で構築した実験系を用いてダイオキシンの腸管吸収を抑制する食品因子のスクリーニングが可能であることが示された。また、茶殻のもつ機能が凍結融解処理によって向上したことから、食品素材の機能改変のモニタリングにも本実験系が有効であることが示唆された。
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