「焙煎ゴマ油」は独自の製法によりリグナンが豊富で、極めて高い酸化安定性を示すことが知られている。抗酸化性(酸化安定性)の評価法として、他の食用油同様にAOM試験やCDM試験が用いられており、焙煎ゴマ油以外の食用油ではほぼ1日以内で測定が終了するにもかかわらず、ゴマ油では7〜10日を要しており、簡便かつ迅速に製品の酸化安定性を評価出来る計測方法の確立が望まれている。 16年度は焙煎ゴマ油を超臨界抽出法により精製し、各分画の酸化安定性を重量法(既存法)および発光法にて計測した。抽出初期にリグナンが多く抽出されることは既報で明らかになっている。特に超臨界抽出の2時間以内の分画で品質が維持されていることは、重量法は70℃の加速試験で30日後に確認できたが、自発極微弱発光は劣化加速試験なしにリグナンの豊富な分画の発光量が多く計測できた。 さらに、加熱劣化時の極微弱発光量を経時的に計測できるシステム構築を行い、発光量変化を指標とした熱酸化安定性評価を試みた。1gの油脂を100℃で劣化させたときの発光量、電気伝導率(CDM試験のセンサ)を計測し変化を詳細に検討した。その結果、焙煎ゴマ油は劣化時に極微弱発光量ならびに電気伝導率が明確に変化する。その変化は油脂の品質と関係があり、発光量の変化(変曲点)は電気伝導率の変化(CDM値)の約1/4時間で生じることが明らかになった。 以上より、各油脂に適した劣化温度の検討等の課題が残っているものの、焙煎ゴマ油に関しては極微弱発光計測を用いることで通常の計測方法より迅速な酸化安定性計測が行えることが明らかになった。
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