研究概要 |
本研究では,マツタケの外生菌根形成からシロの形成に至るまでに必要な生物的・非生物的環境条件を明らかにすることを目的とする。同時に,シロの形成・発達過程におけるアカマツ-マツタケ共生系の生理的な変化を解明する。そのために,大型ライゾトロン内にアカマツ-マツタケ共年系を人工的に構築し,マツタケのシロを形成・発達させるための要因を実験的に明らかにする。 今年度は,大型ライゾトロンを用いた共生系を構築する条件を明らかにするために,以下の研究を行った。 1.無菌条件下において,水ポテンシャルを調整した培土を用いてアカマツにマツタケ菌を接種し,共生系構築に適した培土と水分状態を調査した。その結果,石英砂を培土として,含水率を10〜20%に設定することにより,アカマツ-マツタケ共生系を構築することができた。 2.無歯的に発芽させたアカマツ実生を4種類の滅菌培土で3ヶ月間生育させた後,マツタケ菌を接種した。その結果,いずれの培土においても接種4ヶ月後までにマツタケの外生菌根が形成された。 3.9年生アカマツに取り木処理を行い,得られた無菌根苗木にマツタケ菌を接種した。その結果,接種10週間後にマツタケの外生歯根形成が確認された。 4.木型ライゾトロンを用いて非破壊的に継続して根圏観察を行うために,デジタルマイクロスコープのレンズの改良を行い,アクリルパイプを用いた根圏観察方法を確立した。 また,本研究では,野外のアカマツ林に菌根共生系を導入し,その後の菌根共生の発達過程を詳細に明らかにする。そのために,今年度は,広島県加計町のアカマツ天然林において,約50年生のアカマツ成木から人工的に誘導した外生菌根菌フリーの細根にマツタケ菌の接種を行った。次年度,菌根形成およびシロ形成過程の追跡を行う予定である。
|