研究概要 |
・ヤチダモの繁殖・更新機構を解明するために不可欠なヤチダモ個体間で多型的なDNAマーカーの開発を行い,多型的で安定性の高い14個のRAPDマーカー,4個のマイクロサテライトマーカーを探索取得した. ・北海道中央部に位置する東京大学北海道演習林内の河畔域に設定された5haの調査プロットに分布するヤチダモの全成木の新枝,中心部の雌5個体の種子,林床に更新した当年生実生100個体の新葉をDNA多型解析用サンプルとして採取した.これらの全サンプルからDNAを抽出し,探索取得した上記DNAマーカーを用いて遺伝子型を決定した. ・成木,母樹別種子,当年生実生の遺伝子型を比較し,ヤチダモの花粉流動パターン,種子流動パターンを明らかにした.これにより,種子のステージでは近距離からの交配がメインであるが,一方で長距離花粉流動も一定のレベルで存在すること,実生のステージでは近距離交配は消失し,中距離以上の交配によって得られた個体が存在しているというデモグラフィックな過程での花粉流動パターンの変化が認められた.本結果はこれまでにない新しい知見であり,2004年4月の日本林学会で口頭発表するとともに,国際学術誌への投稿準備を進めている. ・雌雄判別マーカーの探索では,異なる5つの林分の雌雄各5個体を混合して一度に分析するバルク法を用いて,雄もしくは雌に特異的なRAPDマーカーの探索を行った.400個のRAPDプライマーについて調査した結果,雄もしくは雌に頻度の高い2つのRAPDマーカーを探索した.しかし,これらは完全に特異的ではなく,染色体上において性決定遺伝子から少し離れた位置に存在する可能性もある.今後はさらに探索を行う予定である.
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