研究概要 |
本研究の目的は、マツ枯死木材内で餌をなくすことによって病原体マツノザイセンチュウ(以下線虫と略記)の増殖を抑える、すなわち、線虫を「兵糧攻め」にするという発想に基づいて、菌類による病原線虫の制御法を開発することである。 この線虫は枯死木材内で主に青変菌を摂食して増殖し、分散型という特殊なステージになってマツノマダラカミキリ(以下カミキリと略記)に乗り移る。そこで、1)線虫の増殖および分散型ステージの出現を抑制し、かつ2)線虫の餌である青変菌の繁殖を抑制するという二つの性質を合わせ持つ菌類をマツ枯死木やマツ林土壌から探索し、線虫制御の候補菌とした。そして、14年12月に候補菌6菌株をアカマツ枯死木に種駒で接種して青変菌の繁殖を抑制することで、材内の線虫密度を低下させ、カミキリがこの枯死木から運び出す線虫数(初期保持線虫数)を減少させることを試みた。 候補菌接種の効果を判定するために、15年6月から7月にかけてこの枯死木から羽化脱出してきたカミキリ成虫219頭の初期保持線虫数を調べた。カミキリの初期保持線虫数は0〜47,800(平均値±標準偏差=3,766.3±6,584.4)頭であった。接種した候補菌6菌株のうち1菌株の接種区において、菌を接種しなかった対照区と比較してカミキリの初期保持線虫数が減少する傾向が見られた。また、初期保持線虫数が1,000頭未満のカミキリの割合が、対照区では25.0%にすぎなかったのに対し、先の候補菌1菌株を接種した場合には81.8%にもなり、菌接種の効果が見られた。
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