本研究の目的は、マツ枯死木材内で餌(青変菌)をなくすことによって病原体マツノザイセンチュウ(以下線虫と略記)の増殖を抑える、すなわち、線虫を「兵糧攻め」にするという発想に基づいて、菌類による病原線虫の制御法を開発することである。 1.有望菌の増殖・施用方法の開発 前年度にマツノマダラカミキリ(以下カミキリと略記)成虫の初期保持線虫数を減少させる効果の見られた候補菌1菌株を線虫制御の有望菌とした。この菌の増殖・施用方法を検討したところ、液体培地で振盪培養した菌体を不織布に培養して施用する方法よりも、平板培地で培養した菌体を原駒に培養し種駒として施用する方法の方が適していることが分かった。 2.枯死木への有望菌の施用 16年夏にマツ材線虫病で枯死してカミキリが多数産卵しているアカマツを秋に伐倒・切断し、そこに1で検討した種駒で有望菌を接種した。菌接種の効果は、17年夏に判定する(17年夏にカミキリが成虫になって脱出してくると、そのカミキリ成虫の初期保持線虫数を調べる。また、カミキリ成虫脱出後の蛹室および材内のその他の部分から材片を採取して菌類を分離し、有望菌の広がりを確認する。そして、有望菌接種の効果を判定する)。 3.青変菌がマツノマダラカミキリ成虫の寿命に与える影響 線虫の増殖にとって好適な青変菌が線虫の媒介者であるカミキリ成虫の上翅に様々な量で付着しているが、飼育実験の結果から付着している青変菌はカミキリ成虫の寿命に影響を及ぼさないことが明らかになった。
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