研究概要 |
本年度は、トチュウ及びユリノキの細胞培養系の確立、及び形成されたカルスに含まれるリグナン類の分析を行った。トチュウ当年枝を使用しカルス誘導を試みた結果、ガンボーグB5塩類に0.1mg/1 2,4-Dを加えた寒天培地において黄色と緑色の二種類のカルスが誘導された。これらは継代培養も可能であった。得られたカルスをメタノール抽出し、二層分配により酢酸エチル画分とブタノール画分(配糖体画分)に分画し、トチュウカルスに含まれるリグナン類をHPLCにより定量分析した。また、インタクトなトチュウ樹皮についても同様に定量分析を行った。トチュウ樹皮の酢酸エチル画分には、pinoresinol (PR):1310ng/mg、medioresinol (MR):105ng/mg、syringaresinol(SR):157ng/mg、配糖体画分には、PR:49.2ng/mg、MR:12.3ng/mg、SR:64.5ng/mgが存在した。黄色カルスの酢酸エチル画分には、PR:7.54ng/mg、SR:38.0ng/mg、配糖体画分には、SR:52.7ng/mg、緑色カルスの酢酸エチル画分には、SR:37.1ng/mg、配糖体画分には、PR:112ng/mg,SR:32.8ng/mgが含まれていた。このことから両カルス中には、リグナン類を生合成する機構がすでに備わっていることが示された。今後、カルス及び懸濁培養細胞の各々に前駆体及び各種エリシター処理を行い、どのような条件下でリグナン類が効率良く生産されるのかについて研究を行う。 ユリノキにおいては、MS塩類に1.0×10^<-5>mol/1 2,4-Dと1.0×10^<-6>mol/l BAPを加えた寒天培地でカルスが誘導された。このカルスにもリグナン類が微量ながら存在したが、ユリノキカルスは継代培養すると著しく褐変し、増殖しなくなった。現在、吸着剤の添加や培地組成を変えることにより、褐変の防止と継代培養系の確立を行っている。
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