研究概要 |
リグナン生合成における前駆体であるL-フェニルアラニンをトチュウカルスに投与し、カルス中のリグナン類の増減について分析した。投与2週間目のカルスをメタノール抽出し、二層分配により酢酸エチル画分とブタノール画分(配糖体画分)に分画後、トチュウカルスに含まれるリグナン類をHPLCにより定量分析した。L-フェニルアラニンを投与したカルスには、コントロールに比べpinoresinol及びsyringaresinolの含有量が約10-30倍に増加したが、シリンギル基とグアイアシル基の両方を有するmedioresinolの含有量は数倍に増加する程度であった。また、エリシターとしてオリゴガラクツロン酸をトチュウカルスに投与し、リグナン類の増減についても検討したが、含まれるリグナン量には特に変化が認められなかった。今後もリグナン類の生合成がどのようなエリシターや植物ホルモンによって誘導されるのかについてさらに検討を行う。 次に、シリンギル型リグナンの生合成を調べるために、[8,8'-^<14>C]pinoresinolをトチュウカルスに投与するフィーデング実験を行った。同様にリグナン類の分析を行った結果、酢酸エチル画分には、pinoresinol : 8.000%、medioresinol : 0.060%、syringaresinol : 0.075%の放射能の取り込みが認められ、水層画分にはpinoresinol : 0.050%、medioresinol : 0.056%、syringaresinol : 0.054%の放射能の取り込みが確認された。このことから、pinoresinolから水酸化とメチル化反応によりmedioresinolやsyringaresinolへと至る生合成経路が存在することが示唆された。
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