ヒノキチオール生合成に関わると思われる遺伝子(酵素)を二つの手法で得ることを試みた。 計画調書に記載したごとく、本研究者はテルペンシンターゼによりゲラニル二リン酸からテルピノレンを合成し、さらに修飾を受けてヒノキチオールが生産されると予想している。そこで、既知のテルペンシンターゼのcDNA配列を参考にホモロジーを用いたdegenerate RT-PCRにて対象遺伝子の断片を得て、これをもとにcDNAライブラリーからのテルピノレンシンターゼのスクリーニングを行った。RT-PCR産物のDNA配列は従来のテルペンシンターゼに十分なホモロジーを持っていたので、これをプローブとして用い、現在までにいくつかの有望なクローンが得られた。このクローンについては、これらを異種発現させることでこの酵素の詳細を調べる。また、このテルピノレンシンターゼの酵素活性は、通常の培養条件下の細胞ではほとんど見られず、エリシターの刺激によって初めて活性が現れることがわかった。そこで、エリシターによって誘導されるmRNAがヒノキチオール生産関連遺伝子であろうと予想し、マクロアレイ法による発現遺伝子の検索を行った。エリシテーションを行った細胞のcDNAライブラリーを作成し、これに対してエリシテーション前後の細胞のmRNAをプローブとして発現に増減の見られるmRNAを検索した。その結果、エリシテーションにより増加する48のクローンが得られた。また、いくつかの活性が減少するクローンもあった。現在これらのクローンのDNA配列の決定作業をしており、エリシテーション関連シグナリング経路の情報とともにヒノキチオール生産酵素の候補となるクローンが得られると期待される。
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