研究概要 |
イシダイ稚魚の学習能力の個体発生 舞鶴水産実験所で2004年5月から7月にかけて自然産卵したイシダイ受精卵をふ化させて稚魚を飼育し,本種の学習能力の個体発生について調べた,体長2〜10cmの供試魚28個体について実験を行った.学習能力の測定にあたっては,60cm水槽を改造したY迷路を作製し,報酬訓練による条件づけ成立までのトライアル数と正解率を基準にした。また条件づけが成立した場合,正解の側を入れ替える「書き換え学習」の所要トライアル数と正解率についても比較した.各個体3日間・120トライアルの試行での正解率を比較した結果,本種の学習能力のピークは体長7cm前後の時期にあるものと見積もられた.発育段階による学習能力の差は,特に書き換え学習において顕著であった. イシダイ稚魚の学習能力および攻撃行動におよぼすドコサヘキサエン酸の影響 体長2cmまで予備飼育したイシダイ稚魚を10尾ずつ2群に分け,一方にはドコサヘキサエン酸(DHA)を添加した餌を,他方にはエイコサペンタエン酸(EPA)を添加した餌を与え,飼育水槽内での攻撃行動の頻度を観察するとともに,上記のY迷路を利用して学習能力を比較した.両餌料区間で,飼育水槽内におけるつつき行動の頻度には差は認められなかった.しかし学習能力については,DHAを投与したグループの方が有意にすぐれていた.本実験によって,魚類の学習能力において餌由来のDHAの投与が有利に働くことが初めて示された.
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