研究概要 |
平成15年5月7日から30日にかけて現地調査を行った。タイ東北部に位置するナコンパノム内水面水産試験場において,メコンオオナマズ人工繁殖魚10尾の腹腔内にID識別型超音波発信機を装着し,5月11日にナコンパノム近郊のメコン川流域に供試魚を放流した。あらかじめ現地の研究者に依頼して,タイ北部のメコン川流域最上流部に位置するチェンコーン,タイ東北部のメコン川最上流部近傍のサンコーン・シーチェンマイ,放流地点であるナコンパノム,タイ国内のメコン川流域最下流部に位置するコンチアムの計5カ所に設置型受信機を設置しておいた。平成15年7月22日から8月5日にかけて,現地調査を行った。受信機の各設置地点を巡り,受信記録のダウンロードと内部電池交換等のメンテナンスを行った。平成15年12月10日から23日にかけて,成果発表と現地調査を行った。11日から13日にかけてはバンコクで開催されたSEASTAR2000 4^<th> Workshopに参加し,メコンオオナマズに関する特別セッションにて成果を発表した。引き続き現地調査を行い,前回と同様に受信機の各設置地点を巡り,受信記録のダウンロードと内部電池交換等のメンテナンスを行った。放流地点に設置した受信機の記録を見ると,2尾が放流直後に,8尾が1〜2日後に受信範囲外に移動した。2〜10日後に4尾が,6月と8月にそれぞれ1尾ずつが再び放流地点で確認されたが,その後,いずれの受信機においても個体は確認されていない。放流から7〜10日後に50〜100km上流で,のべ4尾がタイまたはラオスの漁業者の刺し網により捕獲された。上流への移動速度は最大で14km/dayと見積もることができる。メコンオオナマズ人工繁殖魚の上流へ移動する傾向と高い遊泳能力が確認されたと共に,メコン川における漁獲圧の高さを示す結果となった。
|