本研究では、試料にカマボコ3種、魚肉ソーセージ、ハンペンを使用し、咀嚼物の粒子数および粒子の大きさの分布(破砕特性)と食品のかたさ・やわらかさ(粘弾性)との関係を明らかにすることを目的とした。破砕特性評価には嚥下衝動直前の咀嚼物を試料とし、咀嚼時間、咀嚼回数、唾液量、咀嚼物粒子数と粒子径を計測した。レオロジー特性については、応力緩和測定を行った。咀嚼物粒子の平均の大きさは食品によって異なったが、食品を嚥下するためには咀嚼物粒子のうち80%以上が直径およそ0.7cm以下の大きさになるまで咀嚼する必要があることが分かった。また、今回使用した試料において、食品の水分含量と咀嚼物中の唾液量を足した値はほぼ同じで、口腔内の水分含量が食品の乾燥重量に対しておよそ110%以上に到達すると嚥下していた。ハンペンは咀嚼により極端に変形して粒子が小さくなったために咀嚼回数が比較的少なく、カマボコおよび魚肉ソーセージは、比較的密度の高いゲルであるので、嚥下可能な大きさになるまでの咀嚼回数を多く要していた。レオロジー特性値と咀嚼回数との関係は、瞬間弾性率および粘性率において相関関係が認められ、食品のかたさ・やわらかさと人の咀嚼行動とを関係付けることができた。これらのことから、食品のかたさ・やわらかさに応じてある粒子サイズになるまで、かつ口腔内の水分含量がある一定量を超えるまで咀嚼し続けなければならないということを、嚥下の必要条件として定量的に表現することができた。
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