アメフラシの紫汁には抗菌・抗腫瘍タンパク質が存在するが、その作用機構は不明である。そこで、本研究では紫汁に含まれる抗菌・抗腫瘍タンパク質の作用メカニズムを明らかにすることを検討した。紫汁にカタラーゼを加えて抗菌活性を測定すると、無い場合より抗菌活性が阻害されることから、過酸化水素の産生酵素が抗菌活性に関与していることが考えられた。他のアメフラシより精製された紫汁の抗菌タンパク質としてL-アミノ酸オキシダーゼがあることから、紫汁のLAAO活性を測定したところ、塩基性アミノ酸を基質とするLAAOが存在することがわかった。次に、紫汁の抗菌作用がLAAOのみで説明できるか検討するため、精製LAAOの抗菌活性と比較した。その結果、紫汁の方がLAAO単独より抗菌活性が強いことがわかり、紫汁の抗菌作用はLAAO単独では無いと示唆された。過酸化水素を基質として抗菌作用を示す酵素としてペルオキシダーゼが知られていることから、紫汁にペルオキシダーゼが存在すると推測された。そこでペルオキシダーゼについて活性測定を行なったところ、ハロペルオキシダーゼが存在することが明らかになった。紫汁に含まれるペルオキシダーゼは遠心により沈澱し、LAAO活性と分離することから、得られた沈澱を0.05%SDSで可溶化してペルオキシダーゼ粗精製物とした。ペルオキシダーゼ粗精製物は抗菌活性を示さないが、LAAOを追加することにより、LAAOの抗菌活性を補強することがわかった。以上の結果より、紫汁の抗菌作用はLAAOおよびペルオキシダーゼにより起こっていると考えられる。
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