研究概要 |
珪藻類の中で比較的Ala-Racemase活性の高い珪藻Thalassiosira sp.を材料としてその単離を試み,その性状および一次構造解析を明らかにすることを最終目的として,本年度はAla-Racemaseの単離・精製を試みた。 精製に必要なThalassiosira sp.を得るため100lタンクによる大量培養を繰り返し行い,300g(湿重量)を用いて粗酵素液を調製した。Toyopearl DEAE-650Mでステップワイズ溶出後,活性の認められた酵素液をToyopearl Buthyl-650Mに供してグラジエント法により溶出させたところ,吸着部に活性が認められAla-Racemase活性は2つに分かれた。それぞれの活性画分について,さらにHydroxyapatite, Sephacryl S-200HRの順でカラムに供し,SDS-PAGEによる純度検定を行ったが,タンパク質濃度が低くバンドは認められなかった。そのため,どの程度精製できたか確認することができなかった。 植物は動物に比べてタンパク質含量が少ないため,今後は精製に用いるThalassiosira sp.量を増やす必要があると考えられる。精製開始時の粗酵素液の全酵素活性を1000U必要とした場合,300gで全酵素活性120Uであることから推測すると,約2.5kgのThalassiosira sp.が必要であると予想される。 精製の途中で2つに分かれたAla-Racemaseのゲルろ過による推定分子量はそれぞれ約63kDaであった。今後は,この2つのAla-Racemaseの性質にどのような相違点が認められるか検討していく予定である。
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