研究概要 |
「豚肉の需給構造と養豚経営の動態-統計的接近-」では,1975年以降の豚肉の需給構造の変化と,それに規定された養豚経営の動態について明らかにした. 養豚では,今日,他の多くの国内農産物においてみられるように,消費の停滞局面における農業構造再編過程に到達していること,そして,おそらくそのテンポは,稲作や酪農はもとより,他の農産物と比較しても著しく速いテンポで進捗していた. 「養豚における上層農の経済的性格-中央畜産会『先進事例の実績指標』分析から-」では,養豚経営の上向展開の過程とそこでの経済的性格について,中央畜産会『先進事例の実績指標』の個票データを用いて明らかにした.その際,分析の対象を農業労働力の存在形態別に,家族のみ,家族+臨時雇,家族+常雇に分類した.養豚経営の上向展開の過程では,労働力数に規定された常時飼養頭数の増加によって繁殖雌豚1頭当たり所得(以降,1頭当たり所得と略記)に上限と下限があらわれた.加えて,経営に常雇が雇い入れられ「大規模飼養技術」が導入されることで1頭当たり所得に構造的な格差がみられるようになった.このような1頭当たり所得の構造的格差は,主として繁殖雌豚1頭当たり出荷頭数と単価の低さに起因するものであった.そして,養豚経営の上向展開の過程では,このような1頭当たり所得の低下を考慮に入れた上で,飼養頭数を増加させ,自立経営下限所得の実現を目指していくという過程であった.この自立経営下限所得の実現においては,家族+常雇の安定性と,家族のみ,家族+臨時雇の不安定性が明らかとなった.
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