フードシステム論的なアプローチを援用する、つまりタンザニアにおける生産から日本における消費までの各流通段階における、構成主体間の相互依存的な関係の連鎖を分析すると、大きく2つのコーヒー・フードシステムの「不公正さ」が浮かび上がってくる。 まずはニューヨーク・コーヒー取引所で決まる先物価格を、あらゆる流通段階における取引の基準価格としていることの「不公正さ」である。消費国側に基準があるため、生産者はその情報を得にくいし、自らの供給調整による生産者価格の引き上げが困難となる。またニューヨーク先物価格を動かすのは、ブラジル産コーヒーの供給実勢、そしてそれを参照して価格差益を追求する投機家の行動であり、タンザニア産コーヒーの供給実勢や生産者の必要性は全く反映しない。 もう1つの「不公正さ」は、生産者価格と消費者価格の大きな格差である。それは多国籍企業が、生産者の必要性を無視する形で安価に調達した原料豆に対して、恵まれた競争構造の下にいる日本の大手焙煎業者が、自由にフルコストを上乗せした結果である。 コーヒーのフェア・トレードは、ニューヨーク先物価格の低迷時に、輸出価格(→生産者価格)の下支えのために、最低輸出価格(生産コストを差し引いても生産者に利益が残る最低水準の輸出価格)を固定する。先物価格が上昇すると従来通りに戻ってしまうという中途半端さはあるが、1つめの「不公正さ」を避け、「生産コストと一定の利益(生活水準)」を基準にする望ましい価格形成のあり方だと考える。 同じくその認証基準は、生産地の社会開発経費として利用される「フェア・トレード・プレミアム」の支払を義務付ける。上記の下支えは、生産者価格と消費者価格の格差拡大を避け、さらにこの利益の一部の生産地への還元によって、2つめの「不公正さ」が間接的に改善する。
|