コーヒーのフードシステムの不公正さ、特にニューヨークのコーヒー取引所で決まる先物価格を基準とする価格形成制度の下では、特に2001〜02年に深刻化した「コーヒー危機」(国際価格(ニューヨーク先物価格)の史上最安値)が、そのまま生産者価格の史上最安値につながってしまう。 実際、タンザニア農村において、小農民のコーヒー販売所得が激減している。さらなる生活水準の悪化に耐え切れなくなった小農民は、出稼ぎ(都市での就職)の可能性を追求するとともに、コーヒー老木を伐採した跡地に、じゃがいも、トマト、トウモロコシなどの新たな商品作物を植え付けている。 このようにコーヒーの生産量は減少しているが、すべての小農民から見捨てられたわけではない。高価な農薬の投入はほとんど期待できないが、無農薬栽培を可能とする新しい品種の苗木が、少しずつ畑に植え付けられている。 さらには、遠いニューヨークで決まる先物価格に従属するのでなく、小農民の側から何とか価格を引き上げようとする動きもある。これまでのように、民間業者や協同組合連合会によって、「上から」生産者価格を押し付けられるのではなく、連合会を通さずに単位協同組合が、あるいは新たに設立した生産者組織が、直接的に競売所へ販売する方法を選択し始めた。その結果、民間や連合会より100〜200Tshs高い生産者価格を実現している。その連合会(KNCU)への出荷を停止した32単協は、新しい連合会を組織する勢いにあり、積極的な事業改善の努力なしには、KNCUの存続も危ぶまれる。 消費国NGOが主導するフェア・トレード運動が、この32単協の挑戦のような、自律的な「下から」の価格引き上げの努力に結び付いて初めて、タンザニア農村の持続的発展が導かれるのである。
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