本年度は牛肉の輸出大国でありかつ高水準の安全性を維持している豪州の牛肉衛生管理・品質保証制度、トレーサビリティシステムを日本と比較解明するために、食肉・家畜生産者事業団、穀物肥育場2カ所、と畜・加工施設2カ所、州政府2カ所の調査を実施した。解明した点は以下の通りである。 1.豪州では、生産から小売にいたる牛肉フードチェーンの各段階で飼養・衛生管理と品質保証の制度が設計され、その枠組みの中で、各企業は衛生管理に取り組んでいる。制度に基づいた管理努力は食肉・畜産生産者事業団、州政府に監視されている。食肉・畜産生産者事業団は生産農家と穀物肥育場段階までを、州政府はと畜・加工場から食肉小売施設までを監視対象としている。企業、食肉関連団体、政府の連携によって衛生管理・品質保証制度が州レベルで機能している。 2.また、肉牛・牛肉のトレーサビリティをシステム化するため、農場の牛に出荷の際の農場番号が記載されたテール(イヤー)タグ等の装着、肉牛の所有権が移転する場合には出荷者証明の添付と証明書中への農場番号の記入、と畜・加工場では外部機関の厳しい監視・指導下での肉牛の農場番号と枝肉の照合、が取り組まれている。 3.日本と異なる点は、飼養・衛生管理と品質保証制度については、日本の繁殖農家、肥育農家段階では制度が存在しないこと、また、と畜・加工場ではHACCP原則に基づいた衛生管理・品質保証制度は存在するものの、まだ任意であること、である。また、トレーサビリティのシステム化については、農家段階からと畜場までの肉牛の個体識別管理が徹底されているが、枝肉等に処理した際の肉牛等の照合等、つまり牛肉のトレーサビリティはシステム化されていない点が明らかになった。
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