積雪寒冷地のダム貯水池として山形県飽海郡平田町の田沢川ダム貯水池を調査対象地に選定し水質観測調査を行った。本ダムは最上川流域相沢川支流の田沢川上流部に位置し、平成14年に運用開始された総貯水量910万m^3、堤頂標高145mのダムであり、例年12月〜3月には流域は積雪で覆われる。 本年度は夏季から冬季にかけての水温成層消滅期を主調査期間とし、平成15年8月より貯水池流入部、ダム貯水池内、放流部における浮遊土砂(SS)の濃度および粒径分布の分析を中心とした調査を行った。調査期間中最大の降雨は、9月初旬の78mm/dayで、その後約2週間放流水のSS濃度は10mg/l以上となったが、濃度が最大となったのは降水後3日経過した後であった。これは本ダムでは表層のみで放流を行っているため、下層に流入したSSが徐々に巻き上げられためと考えられた。これにより、同様の放流操作を行っているダムでは放流水の濁水化が長期化しやすいことが示唆された。 また粒径分布の分析からは、流入水のSSでは150μm〜200μmの粒子が最も多く存在し、濁水長期化に強く影響する考えられる50μm以下の粒子は10%弱であったが、貯水池内のSSでは15μm〜30μmの粒子が50%以上を占めており、10μm以下の粒子も約20%存在した。ストークス式により粒径別の沈降速度を計算し、粒径分布と貯水池内の鉛直移流速度を用いてSSの動態についてシミュレーションを行った結果、50μm以上の粒子は流入後1日以内に底部まで沈降するが、10μmでは約6日間、5μmでは約10日間、1μm以下では30日間以上、底部に達するまでに時間を要することが明らかとなった。
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