研究概要 |
地方都市近郊に位置し人口が維持されている山梨県都留市と、中山間地に位置し人口が減少している山梨県早川町において、周囲の自然環境の利用の変化や将来の森林管理を考える上の問題点にどのような差があるか調査し比較検討を行う。今年度は早川町五箇地区で調査を行った。 聞き取り調査は38世帯の年長者を対象に行った。生業では、1950年頃には計34世帯が第1次産業から収入を得ていたが現在は半減し、13世帯が事務・建設業、9世帯が収入は年金のみであった。若い世代が同居するのは6世帯のみと労働人口が流出していた。耕作地は戦後直後は集落から山上まで広く畑だったが、現在は集落近くのみが耕作される。自然資源利用では、木炭生産は利用されなくなったが、薪採取,採草,山菜・キノコ採集は、利用する世帯は減少しているが、趣味や楽しみとして利用が変化して続けられている。 観察や聞き取りから、集落を囲む森林の機能低下がみられることから、森林の管理意識・環境認識について、20歳以上の常住者にアンケート調査を行った(無記名,直接配布/回収,配布数156,回収率88.5%)。対象者の65%が森林を所有し、そのうち約3割の人が年1回以上行っていたが、半数近くは5年以上行かず、軽作業中心に行われていた。森林の状態について「やや」または「かなり荒れている」と回答者の半数以上が答えた。労働力の流出を考慮すると現在森林の管理が困難となり、その結果森林が荒れていると認識をもつ。今後の管理主体については、所有者管理の原則は強く認識されているが、個人による管理の限界が意識されていた。森林ボランティアへの理解は乏しかった。 都市から離れているこの地域では、都市居住の関心の高い人々を取り込む活動での森林管理は持続的には望めないことから、地域の人々の関心を高めた上で、行政主導でボランティアを募る等の方策が必要と考えられる。
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