研究概要 |
温暖化に対する日本の植生の脆弱性評価を最終な目的として,積雪条件をはじめ,植生分布に影響を及ぼす環境条件のメッシュデータを用いて,植生帯・植物群落の地理分布と気候条件・自然地理的条件の統計的関連性のモデル化を試みた。対象エリアは北海道地域として,自然植生のうち,森林帯である亜高山帯自然植生とブナクラス域自然植生を対象として,これらの植生タイプの分布と気候条件の関連性,および植生タイプを細分した植物機能タイプの分布と気候条件の関連性を統計解析により分析した。その際,植生のタイプを気候条件により分類する判別モデルにおいて,複数の気候条件を適用し,影響の大きい気候条件を明らかにするとともに,モデル間の比較を行った。また統計モデルの結果の分布表示から,空間分布に関する検討を行った。その結果,ブナクラス域自然植生は亜高山帯自然植生と比較して,夏季および秋季において,温暖な地域に分布しており,植生タイプの判別に与える気候条件の影響は,秋季積算最高気温により表される暖かさの条件が,最寒月気温が示す寒さの条件よりも影響が大きく,寒さの条件と積雪深条件については同程度であることが示された。また,ブナクラス域自然植生を構成する植物群落を,落葉広葉樹林と針広混交林に分類して分析した結果,落葉広葉樹林は,針広混交林と比較して秋季・冬季ともに温暖な地域に分布する傾向が見られた。気候条件間の比較では,寒さの条件が暖かさの条件や積雪深条件より,影響が大きいことが示された。
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