研究概要 |
本研究の目的は魚類生息場としての農業排水路の機能を解明することである。水路環境の特徴をあらわす水理環境要因(材質、水深、底質、流れ、植生、落差工による高低差など)に着目し、季節に応じた変動特性を数量的に明らかにする。一方、その水路を利用している魚類については、個体数分布やその個体の成長段階を把握して、生活史を解明する。水理環境の変動特性と魚類生活史との関連性を精査することにより、水路の魚類生息場としての機能を評価する。 平成15年度は、次の1〜2を実施した。 1.調査対象流域:利根川流域の水田地帯から千葉県大栄町の下田川流域(面積9.9km2、本川延長5.1km)を選定した。下田川本川に合流する農業排水路について、国土基本図(1/2,500地形図)と現地踏査等により、水路網の空間的配置、材質、形態などを把握した。 2.農業排水路の空間配置及び水路形状等の把握:(1)調査は田植え終了直後(5〜6月)に実施した。水路周辺は71%が水田、29%が荒地または畑となり、本川には延長27m-1.9kmの排水路が計49本接続していた。水路全体の特性をみると、各支川の延長は500m未満が主体となり(支川数の76%)、水路材料は土や岩、圃場整備等によりコンクリートからなった。底質は砂泥、水面幅は0.2〜1.0mを中心に分布した。水路内植生は抽水と湿生に分類され、落差工の高低差は0.4〜1.3mが全箇所の40%を占めた。(2)各セグメントの水路特性を本川と支川ごとに集計し、特性因子を変数としてクラスター分析(平方ユークリッド距離、Ward法)を実施した。流域内の水路は、材料、底質、植生等の基準因子により、支川単位で6つに類型化されることが明らかとなった。
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