性腺の組織学的観察:2002年5月〜2004年1月までの間に雌雄のハシブトガラスより性腺を採取し、その組織構造を観察した。口内の色素によって、若鳥(推定0〜36月齢)、成鳥(36月齢以上)に分けた。本年度は、オスの精巣の観察を主に行った。若オスの精巣重量は平均0.01gであり、季節的な変化は認められなかった。一方、成オスのそれは、非繁殖期における平均値は0.04gであったが、繁殖期と考えられている3-6月には平均0.77gと、増大していた。また、精細管の直径は、若オスではやはり年間を通じて約40μmであり、成オスの平均値は非繁殖期では平均41.6μmであるのが繁殖期では114.4μmに増大していた。また、成オスの精細管内の生殖細胞は、非繁殖期においては精原細胞のみが観察されたが、繁殖期においては精子までの全ての段階が観察できた。 内分泌学的検討:年間を通じてオスのハシブトガラスの血中テストステロン(T)濃度を測定したが、発達した精巣を持った個体からも、測定系の検出限界(0.04ng/ml)以下の値しか得られなかった。この原因としては、カラスを捕獲してから時間をおいて血液を採取したため、ストレスにより生殖機能が抑制されたことが考えられた。ストレス関連ホルモンのコルチコステロンの血中濃度を測定し、状況による若干の差異を認めたが、基底値(ストレスをかけない状態の濃度)がはっきりしないため、T濃度の値と関連付けることはできなかった。今後、ストレスをかけずに採血することが課題となった。 雌雄の身体的差異:嘴の長さは、若鳥、成鳥ともにオスの方がメスよりも有意に長かった。 その他:やはり害鳥となり得るマガモにおいて、血中T濃度を測定したところ、繁殖期である4-5月には、それ以外の時期の2-4倍に増加していた(ただし用いたのは家禽化されたマガモである)。
|