成長ホルモンの分泌は、これまで視床下部ホルモンであるGHRH(促進)とソマトスタチン(抑制)によって制御されていると考えられていた。一方、GHS受容体(GHS-R)と呼ばれるオーファン受容体を介した制御機構も存在することが報告され、新たな内因性成長ホルモン分泌刺激ホルモンとして胃分泌物質、グレリンが発見された。しかし、グレリンの脂肪細胞分化・形成(アディポジェネシス)、脂肪細胞における作用機構およびグレリン受容体の発現機序についてはまだ不明である。したがって、我々は、脂肪細胞におけるグレリンとGHS-Rの関係を明らかにするために、めん羊およびラット脂肪細胞の生成過程に対する成長ホルモン刺激受容体アンタゴニストである[D-Lys-3]-GHRP-6の作用を調査した。[D-Lys-3]-GHRP-6はめん羊およびラット脂肪組織由来の前駆脂肪細胞の脂肪細胞分化を有意に抑制した。また、脂肪細胞分化のマーカーであるPPAR-γ2の発現量は[D-Lys-3]-GHRP-6を10日間添加することによって減少した。逆に、グレリンは脂肪細胞分化過程においてGPDH酵素活性を増加させ、PPAR-γ2の発現量を上向き調節することにより、脂肪細胞分化を促進した。また、めん羊およびラット脂肪組織から単離した脂肪細胞において、グレリンによる脂質分化抑制能は[D-Lys-3]-GHRP-6添加によって減弱された。我々の結果はGHS-Rを介する脂肪細胞分化・形成過程が、[D-Lys-3]-GHRP-6によって抑制されることを明らかにしたものである。
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