研究概要 |
血管内皮細胞は血流によるずり応力を受けており,近年.このずり応力が血管内皮細胞のコレステロールの取り込みに影響を及ぼしていることが明らかになってきた.本研究では内皮細胞において,ずり応力がどのような細胞内シグナル伝達経路を活性化してコレステロール取り込みを調節しているかを明らかにし,動脈硬化の予防法の確立に寄与することを目的としている. 培養ウシ血管内皮細胞に回転円盤装置を用いてずり応力を負荷したところ,LDLの取込みは上昇したが,アセチル化LDLの取込みは逆に減少したことから,ずり応力がエンドサイトーシスの種類によって異なる調節を行っている可能性が示唆された.これらの事実は既に国外雑誌に報告した.ずり応力によるエンドサイトーシス調節に関与する細胞内情報伝達磯序を調べるために様々な阻害剤を用いてルシファーイエローの取込み(エンドサイトーシスの指標)に対する影響を調べた.その結果,NADPHオキシダーゼの阻害剤で有るアセトバニロン,および抗酸化剤であるNACによってエンドサイトーシスは抑制された.また.活性酸素の蛍光プローブであるDCFHを用いて内皮細胞内の活性酸素量を測定したところ,ずり応力を負荷することで実際に内皮細胞の活性酸素量が増加することが分かった.これらの結果から,ずり応力は血管内皮細胞のNADPHオキシダーゼを活性化して活性酸素を産生し,この活性酸素がコレステロール取り込みの細胞内情報伝達分子となっていることが示唆された.一方,ずり応力によるルシファーイエローの取込み増加はプロテインキナーゼC(PKC)の阻害剤であるカルフォスチンで抑制された.このことはPKCの活性化がエンドサイトーシスに関与していることを示している.現在,活性酸素産生とPKCの活性化のどちらが先に起こるのか,あるいはそれぞれ無関係にエンドサイトーシスに関与しているのかを調べている.
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