本研究はニワトリヒナにおけるグルカゴン関連ペプチド、特に血管作動性腸ペプチド(VIP)と下垂体アデニレートシクラーゼ活性化ポリペプチド(PACAP)の摂食抑制作用機構について調べることを目的としている。本年度はVIPの摂食抑制ネットワークについて調べた。 1 VIPとストレスとの関係 前年度の研究により、VIPおよびPACAPが脳内副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRF)神経系を刺激していることを見出した。CRFはストレス反応に関わっているため、VIPとPACAPもストレス反応に関わっているかについて行動学的に検証してみたところ、両ペプチドを脳室内投与しても、CRFと同様の行動変化は観察されなかった。両ペプチドがCRFと関わりがあるが、ストレス反応自体はCRFとは異なることが明らかとなった。また、グルカゴン関連ペプチドであるグルカゴン様ペプチド-1の摂食抑制作用もCRFと関わりがある可能性を見出した。 2 VIPとエネルギー代謝との関係 脳内VIP、PACAPと末梢組織との関係を調べるため、両ペプチドの脳室投与によるエネルギー代謝の変化を調べたところ、VIPはエネルギー消費を抑え、PACAPは逆に刺激することを見出した。また、両ペプチドで作用が異なる原因として、PACAPがその独自のレセプターを活性化していることを挙げることができた。さらに、両ペプチドによりヒナの脂質代謝が変化することを明らかにした。 3 プロラクチン放出ペプチドの脳内作用 鳥類において、VIPはプロラクチン分泌作用をもつ。前年度では、プロラクチン放出ペプチド(PrRP)がVIPと同様に摂食を抑制するかを調べたところ、予想とは逆に摂食を促進した。この原因を明らかにするべく、PrRPの脳室投与によって血中プロラクチン濃度が増加するかを確認したところ、PrRPはヒナのプロラクチン分泌を抑えることが明らかとなった。
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