研究概要 |
反芻獣には2種類のパイエル板があると考えられている。一つは局所免疫を担う空腸パイエル板で、もう一つはB細胞が一次レパートアを獲得する場である回腸パイエル板である。特に回腸パイエル板は動物が性成熟するに伴い退祝することが知られている。今回これらのパイエル板で発現しているトランスクリプトームのプロファイルの違いから両パイエル板の機能差を研究した。出生後両パイエル板リンパ濾胞の中心部分にIgG1陽性細胞が出現すること。しかしながら、in situ hybridization法でIgG1 mRNAの発現を観察すると空腸パイエル板リンパ濾胞にはその発現が観察されるが、回腸パイエル板リンパ濾胞にはほとんど観察されないことが明らかとなった。次にそれぞれのリンパ濾胞を物理的に単離し濾胞内で発現しているサイトカイン(IL-1beta,IFN-gamma,IL-2,IL-4,IL-6,IL-7,IL-8,IL-10,IL-12,IL13,IL-18,TNF-alpha,GM-CSFの13種類)と,GAPDH(PCRコントロール)の発現差を調べた。空腸パイエル板の単一濾胞では上述の13種類のサイトカインすべてが観察された。しかしながら、回腸パイエル板では、IL-1beta,IL-6,IL-7,IL-10,IL-12,IL-18,TNF-alphaは観察されたが、IFN-gamma,IL-2,IL-4,IL-8,IL-13,GM-CSFは観察されなかった。回腸パイエル板で観察されないIL-4,IL-13はリンパ濾胞内でB細胞のIgクラススイッチやメモリーB細胞の誘導に関与することが知られている。つまり、空腸パイエル板リンパ濾胞ではIgクラススイッチが起こっており、メモリーB細胞の誘導が起こっていることが考えられるが、回腸パイエル板リンパ濾胞内ではそれらは起こっていないと予想できる。
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