研究概要 |
近年のヒートゲノムプロジェクトの知見から、脂肪細胞は糖尿病、高血圧、高脂血症等に代表される生活習慣病の原因と見なされており、その重要性が注目されている。また畜産分野においても、牛肉価格を決定する主要因はロース部分における筋肉内脂肪,(筋肉繊維に侵入・沈着した脂肪組織)の多少、すなわち霜降りであるため、筋肉内脂肪に効率よく飼料エネルギーを分配させつつ他の脂肪部位を減少させるための新しい飼養技術開発が要求されている。 よって本研究は、霜降り肉を多く産生するように長期間に渡り育種選抜され、筋肉内脂肪含量を増加させる遺伝子を多数保有していると予想される黒毛和種を脂肪蓄積のモデル動物として、黒毛和種筋肉内脂肪と他の部位に蓄積する脂肪組織との遺伝子発現の差異をPCR subtraction法を用いて検出し、脂肪細胞の組織特異的な増殖、分化、蓄積の生理学的モデルを構築することを目的とした。 肥育期間中の各時期に黒毛和種より皮下、筋肉間、協肉内脂肪を採取し、メッセンジャーRNAを抽出した。逆転写酵素によりメッセンジャーRNAから相補的DNAを合成し、回数を変えてPCR増幅し、サブトラクション反応に最適なPCR回数を24回に設定した。筋肉内脂肪と他の脂肪組織の相補的DNAとを混合してPCRサブトラクション反応を行い、筋肉内脂肪にのみ発現するPCR断片を濃縮した。そのPCR断片をプラスミドに導入し、大腸菌へのトランスフェクションを行い、サブトラクションライブラリーを構築した。発現の増減が観察されるクローンを同定するためにそのライブラリーのディファレンシャルスクリーニングを行い、複数の陽性クローンを得た。
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