数種類の動物種由来の細胞株で増やしたオーエスキー病ウイルス粒子を精製し、ウイルス粒子上にGal-1-3Gal分子が存在するか否か確認したところ、ブタ細胞で増やしたウイルスでは検出されたが、ヒト由来細胞で増やしたウイルスでは検出されなかった。また、ブタ・ヒトだけではなく多くの動物種由来の細胞株でウイルスを増やし、得られたウイルスのヒト血清への感受性を比較したところ、Gal-1-3Galを表面上に多く持っている細胞で増やしたウイルスが感受性であることを確認した。また、ヒト血清によるウイルス中和は精製Gal-1-3Gal添加によって抑制され、補体不活化により完全に喪失した。このことから、ヒト血清中に含まれるいわゆる自然抗体(抗Gal-1-3Gal抗体)が補体古典経路を介してオーエスキー病ウイルス中和にかかわっていることが示された。また、宿主細胞のちがいにょって、オーエスキー病ウイルスがヒト血清によるウイルス中和に対して耐性を持つことも明らかとなった。 加えてブタ細胞で増やしたウイルスはブタ血清では中和されないが抗Gal-1-3Gal抗体を添加するとブタ血清でも中和されること、宿主細胞に反応する自然抗体を事前に除いたヒト血清はウイルス中和活性を失うことも確認した。これらの実験結果は、ヒト・サルだけが持つとされている抗Gal-1-3Gal抗体のオーエスキー病ウイルス感染阻止における重要性を示唆している。 ブタ末梢血細胞からヒト由来細胞へのオーエスキー病ウイルス感染の有無については15年度中に明確な結果が得られなかったが、15年度中にPCRに代わるより鋭敏な感染検出系の作成に成功し、この系を用いて検討を重ねているところである。
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