高張食塩液(HSS)が晶質浸透圧により脳脊髄液量を減少させるため、脳浮腫の改善薬として有用であることを報告した。しかし、この効果は一過性であるため臨床応用には問題点が多い。一方、HSSにデキストラン70を配合した6%デキストラン加7.2%高張食塩液(HSD)は、晶質浸透圧効果だけでなく膠質浸透圧効果が加わるため、HSSよりも高い脳浮腫改善効果が期待できる。従って、平成17年度では、HSDとHSSの脳血液循環および脳脊髄液量におよぼす影響を上矢状静脈断面積および脳脊髄液量を指標に比較した。【材料および方法】イソフルラン吸入麻酔下健常ビーグル犬(n=5)に対して、5mL/kgのHSDまたはHSSを20mL/kg/時で静脈内投与した。投与開始直前(pre)および投与開始後15分間隔で、磁気共鳴装置(MRI)を用いて下垂体および小脳辺縁部垂直断面画像を撮影し、上矢状静脈断面積および脳脊髄液領域の変化を比較した。また、pre値に対する循環血液量の変化量(rPV)を算出した。【結果】HSD群のrPVは、投与終了時に128.2±1.0%を最高値とする有意(p<0.01)な増加が認められ、これはHSS群のrPVよりも有意(p<0.05)に高値で推移した。HSDおよびHSS群の上矢状静脈断面積は、pre値に対してそれぞれ2.09±0.25(30分後)および1.97±0.16倍(60分後)を最高値とする有意(p<0.05)な拡張が認められたが、両群間で有意な差は認められなかった。しかし、HSD群の脳脊髄液量は、pre値に対して30分後に0.56±0.10倍を最低値とする有意(p<0.01)な減少が認められ、HSS群のそれよりも有意(p<0.01)に低値で推移した。【考察】HSDはHSSよりも脳脊髄液量を有意に減少させたため、HSDはHSSよりも脳浮腫の改善効果が高いと思われた。
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