日本国内でのアトラジンの使用が禁止されたことから、本年はアトラジンと同じトリアジン系農薬成分であるシマジンを研究対象とした。また、新たにベノミルも対象に加えた。これらの農薬成分を分解する微細藻類および細菌のスクリーニングを試みた。 シマジン分解藻類のスクリーニング対象として、まずは土壌藻類を対象とした。現在までに、単一炭素源としてシマジンあるいはベノミルのみを加えた無機培地中で、暗条件下にて生育する藻類は得られていない。土壌からの微細藻類のスクリーニングの際、微量の土壌成分が混入し、それを栄養源として生育する細菌の生育によって、微細藻類が死滅する問題がたびたび発生した。これまで、農薬成分を分解する藻類は少ないながらもいくつか知られているが、みな微生物保存機関より分譲を受けた既存の培養株であり、土壌や水圏よりスクリーニングした例はない。おそらく、混入した細菌の増殖速度があまりに大きいため藻類が生育しないという問題のためであると思われた。よって本研究でも、今後は、既存の培養株か、独自に分離し無菌化した培養株の中から農薬成分分解藻類をスクリーニングすることにする。 また、これまでに単一炭素源としてシマジンあるいはベノミルのみを加えた無機培地中で生育する数株の細菌が土壌より分離された。これらは、寒天培地上でのコロニーの外観が互いに類似しており、単一種である可能性がある。しかし、農薬成分を加えた無機培地中での生育速度は非常に小さく、分解率の測定には至っていない。試みにトリアジン系農薬成分の分解系酵素遺伝子群(既知のもの)について、PCRを利用して有無を試験したところ、既知の遺伝子と相同性の高い遺伝子は持たないことが示されている。新規な分解系遺伝子の発見が期待される。
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