ケナフ木質部をポリエチレングリコールで加溶媒分解して、ウレタン材料のポリオール成分として活用することを試みた。これまで植物を加溶媒分解し石油代替原料を取得する研究は可能な限り溶解化する点に注力が置かれてきた。本検討ではケナフに含まれるセルロース繊維分を積極的に未溶解分として残す加溶媒分解を目指した。この手法により、残存繊維分が補強剤の役割を果たす、いわばセルロース繊維強化型ポリウレタン材料の創製を期待した。 当該年度は、上記に合目的的なポリオール原料を得るに最適な加溶媒分解条件を検討した。加溶媒分解における反応容器の形状、撹拌方法、試料性状、溶媒量比(以下液比)、添加触媒(硫酸)量、及び反応時間を様々に変えて実験を行った。得られた試料の残渣率、残渣分のFT-IR分析、及び溶解分の水酸基価を測定した。 液比を7から順に下げていったところ、液比1までは試験管状の簡易な反応装置で加溶媒分解が可能なことが判明した。次に液比を1に固定して、他の条件での分解挙動を精査した。酸触媒量0.30mMol/gの場合、反応時間が経過するにつれ、一度加溶媒分解されたリグニンおよびセルロース分解物の縮合が起こる。酸触媒量0.20mMol/g場合、加溶媒分解はあまり進行しない。中間的な触媒量の0.25mMol/gにおいて、反応時間30分でリグニンが十分に加溶媒分解され、得られた残渣はセルロースに近いことが示された。液比1・酸触媒量0.25mMol/試料g・反応時間30分が標記目標に適当な条件と考えられた。この条件から得られるケナフ木質部加溶媒分解物は、溶解部の水酸基当量=220mgKOH/試料g、不溶分52%(同成分はセルロースに近いIR吸収パターンを示す)であった。その他に、取得分解物の特性を自由にコントロール出来る分解条件を整備した。
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