ケナフ茎芯(木質部)をポリエチレングリコールで加溶媒分解して、ウレタン材料のポリオール成分として活用することを試みた。特に、ケナフに含まれるセルロース繊維分を積極的に未溶解分として残す加溶媒分解に注力をおいた。この手法で得られた分解物を原料として、残存繊維分が力学特性補強の役割を果たす、いわばセルロース繊維強化型ポリウレタン材料の創製を期待した。 まず、上記に合目的的な加溶媒分解条件の決定を行った。加溶媒分解における反応容器の形状、撹拌方法、試料性状、溶媒量比、酸触媒の種類と量、及び反応時間を検討因子とした。得られた試料の残渣率、残渣分のFT-IR分析、及び溶解分の水酸基価の結果を考慮すると、ケナフ/ポリエチレングリコール分解溶媒仕込み重量比=1、硫酸触媒量=0.25mMol/ケナフ試料g、反応時間=30分が最適条件と決定した。この条件から得られるケナフ木質部加溶媒分解物は、溶解部の水酸基当量=220mg KOH/分解物g、不溶分52%(不溶分はセルロースに近いIR吸収パターンを示す)であった。不溶残渣を光学顕微鏡で観察したところ、短い繊維が多く見られた。 この最適分解条件から得られたケナフ由来ポリオールを原料として、溶媒キャスト法でポリウレタンフィルム試料を作成した。不溶残渣を除去したフィルム試料と比べ、残渣を含む分解全液から調製したそれは引張強度とヤング率は高くなり、破壊伸びは小さいという傾向を示した。一例として引張強さ56MPa、ヤング率0.75GPaを示し、硬質ポリウレタンとしての応用が期待できる。一方で、不溶残渣を含む分解全液から調製したフィルム試料では、ガラス転移温度が増加すると共に高温域(150℃付近)でのゴム状平坦部の貯蔵弾性率が高くなった。残渣とイソシアネート化合物が反応して架橋構造が形成されることが強く示唆された。
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