塩化カドミウムを添加した人工汚染土壌でペレニアルライグラス(イネ科)またはミヤコグサ(マメ科)を栽培した。土壌はあらかじめオートクレーブ滅菌し、菌根菌接種区では栽培開始時に菌根菌胞子を添加した。菌根菌にはGlomus intraradices(実験室株)、実際の汚染土壌より採取した株を純化せずに用いた。栽培後の植物体は乾燥/粉砕後、熱硝酸による湿式灰化を行い、ICP-MSでカドミウム濃度を測定した。 土壌中の低濃度のカドミウム(土壌乾重量ベースで2-20ppm)は実験に用いた宿主植物の生育や菌根菌の生育・感染には顕著な影響を与えなかった。ミヤコグサを宿主に用いた場合、菌根菌の感染は培土の低リン酸条件下ではカドミウムの吸収促進、高リン酸条件下では吸収抑制の方向に働くことが示唆された。低リン酸条件下での吸収促進は、ペレニアルライグラスでも認められたがミヤコグサでより顕著であり、ミヤコグサの方が生育やリン酸吸収における菌根菌依存性が高いためと考えられた。菌根菌による土壌中カドミウムの吸収促進(低リン酸条件下)と吸収抑制(高リン酸条件下)は、生育量に有為な差が生じていない短期間の栽培においても認められたことから、これらは菌根菌による宿主の生育促進がもたらした二次的影響ではなく、菌根共生の直接の効果であると考えられる。しかしながらこれらの影響は20ppm汚染土壌で数10ppm、2ppm汚染土壌では数ppmの範囲であり、カドミウム汚染土壌の修復などに活用しうるレベルではないと考えられた。一方、フィールド調査ではカドミウム汚染レベルの異なる複数の汚染地土壌サンプルから菌根菌が検出されたことから、少なくともある種の菌根菌はカドミウム汚染環境に耐性があると考えられた。これらのうち、実験室内での増殖に成功したToyama株については宿主のカドミウム吸収への影響について実験室株と同様の傾向を示した。
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