研究概要 |
植物において、花成などの有性生殖器官の分化誘導は、栄養生長相から生殖生長相への転換点であり、その遺伝的制御機構の解明は発生学上重要な研究対象である。本研究では、下等植物における有性生殖器官の分化誘導の制御に関わる遺伝子を探索するためにゼニゴケ生殖器官誘導変異株の解析を行った。 ゼニゴケは、10-40μEs^<-1>m^<-2>の定常光・20℃での培養条件下では、生殖器官を誘導しない。しかし、プラスミドpMTをタグとして導入し、作製した変異株hpt2040は、上記の培養条件でも生殖器官を形成誘導する。hpt2040株と野生株との交配で得られたF1株の1つ2040p-169株において、ゲノムDNAに挿入されているプラスミドpMTの数はhpt2040株および他のF1株よりも少なかった。2040p-169株ゲノムに挿入されたタグ近傍のゲノム配列を明らかにし、それらを用いて野生株由来のゲノムクローンpMM23-195C11、pMM23-475F7及びpMM24-34B2を単離した。さらに、タグ挿入領域をクローニングしたコスミドライブラリー及びタグ近傍のコンティグ地図を作製した。野生株のゲノム領域を2040P-169株の該当するゲノム領域と比較したところ、2040p-169株のpMM23-195C11に相当する領域に673bp及び5,930bpの欠失、pMM23-475F7に相当する領域に8bpの欠失が生じていた。遺伝解析により、これら3箇所の欠失がhpt2040株の表現型と連鎖していることが判明し、これらの欠失領域にhpt2040変異原因遺伝子が存在する可能性が示唆された。
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