平成15年度の研究計画では、トウモロコシ由来レスポンスレギュレーター(RR)のアイソフォームであるZmRR1、ZmRR2の結晶構造解析を目指していた。しかし現在のところ、発現条件の詳細な検討にもかかわらず両方とも発現量が少ないのと、融合させて発現させているGST-tagをプロテアーゼで除去する条件が定まっていない。一方、昨年末に酵母由来のhistidine phospho-transfer protein (HPt)とRRとの蛋白質-蛋白質複合体の立体構造が報告された。トウモロコシ由来と酵母由来HPtでは、互いによく似たfour-helix bundle構造を持っており、さらに植物間で保存されている残基をトウモロコシのHPt分子上に表示すると、酵母のHPtにおいてRRと相互作用する領域と極めてよく一致する。従って、酵母と植物との間では、HPtとRRの相互作用様式は本質的に同一である可能性が示唆される。以上の結果に基づいて、現在トウモロコシ由来のHPtとRRの複合体モデルを構築している。具体的には、結晶構造解析によって得られたトウモロコシ由来HPtと、ホモロジーモデリング法によって立体構造を発生させたZmRRを、それぞれ酵母の複合体構造に重ね合わせ、さらにドッキングシミュレーションプログラムを用いて、両蛋白質分子の側鎖の位置等に修正を施すという手順によって作製している。来年度は、引き続き2種のZmRRの結晶構造解析を目指して、培養、精製、結晶化条件の検索を続けるのと、得られた複合体モデルの評価、証明をするために、two-hybrid法及び表面共鳴プラズモン法を用いて、HPtとRRの各々のwild-type及び変異体について、これら2種の蛋白質の相互作用を測定することによって、両蛋白質のアイソフォームの組み合わせによって親和性の違いをもたらす残基の同定を試みる予定である。
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