粗面小胞体においてハイマンノース型糖鎖を認識する細胞内レクチン様タンパク質がタンパク質の輸送、分解、フォールディング等の品質管理を担っていることが報告されている。しかし、翻訳後修飾によって付与される糖鎖を認識するタンパク質群を網羅的に解析、取得するツールは無い。そこで申請者はこれらレクチン様タンパク質を網羅的に取得する方法として、化学合成によって得られる構造が均一なハイマンノース型糖鎖をビーズに結合させたハイマンノース型糖鎖結合ビーズを考案し、これを実現すべく本課題を申請した。 今年度は以下の2点について検討を行った。 1)ハイマンノース型糖鎖の合成および糖鎖のビーズへの導入法の検討 ハイマンノース型糖鎖10糖(Man_8GN_2)、11糖(Man_9GN_2)、12糖(Glc_1Man_9GN_2)の化学合成法を確立した。そして、還元末端部分にヨウドアセタミド基を導入した糖鎖を合成し、SH基のアルキル化反応を利用して活性化セファロース担体に糖鎖を導入した。 2)糖鎖ビーズを用いたカルレティキュリン(CRT)のアフィニティー精製 今回調製したMan_8GN_2、Man_9GN_2、およびGlc_1Man_9GN_2糖鎖結合ビーズを用いて、Glc_1Man_9GN_2糖鎖を認識する細胞内レクチン様蛋白質CRTのアフィニティー精製を試みた。その結果、Glc_1Man_9GN_2糖鎖結合ビーズにより、混合物中からCRTのみを取得することができた。一方、CRTは糖鎖構造が異なるMan_8GN_2およびMan_9GN_2糖鎖結合ビーズには結合しないことが判った。 来年度はこれらの糖鎖結合ビーズを用いて細胞抽出液などからレクチン様タンパク質の網羅的取得を目指す。
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