研究概要 |
研究代表者は二酸化炭素を再利用する新しい反応系(二酸化炭素リサイクル反応系)の開発を目指し、その検討を行った。その結果、炭酸プロパルギル化合物に対しパラジウム触媒存在下フェノールを作用させると、二酸化炭素の脱離-再付加を伴った二酸化炭素リサイクル反応が連続的に進行し、環状炭酸エステルが効率的に生成することを見いだした。[J.Am.Chem.Soc.,2003]。本反応は不斉配位子BINAP存在下にて行うことでエナンチオ選択的な連続反応が進行し、光学活性環状炭酸エステルが高い不斉収率で得られてくる。 また基質のプロパルギル位に不斉中心を持つ光学活性な基質に対して反応を行うと、エナンチオ特異的な反応が進行し、基質のキラリティーが全く損なわれることなく相当する光学活性環状炭酸エステルが生成することを見いだした[Org.Lett.,2003]。この結果から本反応では二酸化炭素の脱離-再付加のプロセスと共に、軸性不斉を持つアレニルパラジウム中間体を経る連続的なキラリティーの転移が進行していることが明らかとなった。 また基質にアリル基を導入した炭酸アリルエステルに対しパラジウム触媒を作用させた場合においても二酸化炭素リサイクル反応が進行し、ビニル置換された環状炭酸エステルが生成することを見出した[J.Org.Chem.,2004]。本反応は様々な基質に対し適用可能であり、触媒量のパラジウムを作用させるだけで相当する環状炭酸エステルに速やかに変換することができる。 これら見出した二酸化炭素リサイクル反応は高度に置換された環状炭酸エステルを一挙に得る方法として、今後様々な有機合成への応用が期待される。
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