本年度の研究においては、ニオブやタンタルを中心金属として用いる新規光学活性Lewis酸触媒の開発、および安定で長期間保存可能な光学活性ジルコニウム触媒の開発研究を行った。 ニオブやタンタルはその価数は5価であり、チタンやジルコニウムの4価と比べて一つ価数が多い。よって、これまでよりも比較的強いLewis酸活性が期待できる一方、用いる光学活性配位子は、金属に対してより多点で配位して制御することが必要であると考えられる。そこで今回新たな多座配位子として、ビナフトール骨格を有する新規3座配位子を設計し合成を行った。得られた配位子を用いて光学活性ニオブ触媒を調製し、これをイミンとケテンシリルアセタールとの不斉Mannich型反応へと適用したところ、反応が円滑に進行し高い不斉収率を与えることを見出した。本例はニオブをLewis酸触媒として用い、高エナンチオ選択的反応を実現した初めての例である。一方で、我々はこれまでにジルコニウムを中心金属として用いる多種類の光学活性Lewis酸触媒を開発しており、イミンやアルデヒドに対する反応において極めて有効に機能することを明らかにしている。また、これらのうち、不斉Mannich型反応において有効な触媒をゼオライトの一種であるモレキュラーシーブス上に分散させることで、安定で長期間保存可能な高選択的光学活性Lewis酸触媒を開発している。そこで、本手法を用いることにより、他のジルコニウム触媒も安定化できるのではないかと考え、不斉アルドール反応において有効である触媒を用いて試みたところ、同様に安定化できることを明らかにした。本触媒は長期間にわたって安定に保存でき、アルドール反応における選択性も低下しないことを明らかにした。
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